2025年12月8日(月)無印良品銀座6階の特設会場で、特別会「結ぶ言葉 ライトハイク」を実施しました。特別ゲストは、ライトハイク協会理事でもある林家たい平師匠。満を持しての登場です。そして、第1回、第3回にもご活躍いただいた、林家咲太朗さん。たい平師匠のお弟子さんであり、息子さんです。

今回も毎回恒例の言葉を使った<頭のストレッチ>から入ります。何事も準備体操は必要。創作においても、いきなり詩作に入るのではなく、まずは言葉に対しての感受性を高めておく必要があります。私(弊会代表/当日・司会進行)が大好きな「穴あき俳句・川柳クイズ」を数題おこないました。
頭を温めてから、本日最初のお題、咲太朗さんから
今日咲いた綺麗な花
を提示しました。同日午後、毎日ホールで実施した「認知症予防セミナー ライトハイク・メソッド」と同じお題です。こちらを上の句として、同じ文字数(9文字)で下の句を参加者の皆さんに結んでもらいます。出てきた作品の中から、いくつか紹介します。
今日咲いた綺麗な花
つぼみを見たかった
今日咲いた綺麗な花
花嫁ドレスは3度目
今日咲いた綺麗な花
早くなれ私のオクラ
どれも素敵ですね。何が、どこが素敵なのか。その答えは以下にあります。
今日咲いた綺麗な花
君へそっと贈る想い
今日咲いた綺麗な花
心に灯る小さな祈り
今日咲いた綺麗な花
優しい光を運ぶ風よ
この3作品はAI(Chat GPT)が出した下の句です。多分、「なかなかいいじゃない」という感想を持つ方が多いでしょう。そうですね。確かに、詩っぽいです。ぽいじゃなく、ちゃんと詩句と呼べるものであるのは間違いありません。AIすごい。
では、上に並べた正真正銘、人間が結んだ3作品と、下に並べたAIが作った3作品を比べて、皆さん、どのように感じられますか。
まず、言えるのは、、、
下の3作品は、人間も作ることができる。
でも、上の3作品は、AIには作れない。
そう、私は思っています。
AIの作品は、小綺麗にまとまっています。私にはただそれだけに見えます。容赦無く言えば、上っ面だけで中身がない。それは、AIの作品だからという偏見からくるのかもしれませんが、どうしても「何か」足りなく感じるのです。言葉だけの虚実というか。
上の句は、AIには出せない。生きて、暮らして、人生経験を積まないと、出せない言葉です。上手い下手ではないのです。言葉の向こうにある、厚み、深みなのです。口先だけの言葉とは違うもの。
それを作り出しているのは、やはり「心」だと思います。
見えないが分かる心の美しさ
言葉のクイズでも使った、川柳(毎日新聞「万能川柳」より)です。
人間が作ったものには、しっかりとその人の「心」を感じます。
ここまでにAIが到達するには、まだまだ時間がかかると思います。
とは言え、意外にあっさりと達してしまうかもしれませんが・・・
さて、次は、たい平師匠のお題。
こちらも認知症予防セミナーと同題です。
捨ててよって言ったじゃない
たい平師匠のお題意図のお話を伺うに、師匠は「音・リズム」を大事にされたということ。ライトハイクは「音数」に縛りのない自由詩ですが、師匠は音にもこだわります。音にこだわる人にも対応できる器が、ライトハイクの懐の大きさです。
面白いですね。別に、日本語の韻文としての5音、7音の五七調ではないのです。
す・て・て・よ・っ・て (6音)
い・っ・た・じゃ・な・い(6音)
6音のリフレイン。そして、「っ」を入れたリズム。
「すててよっていったじゃない」続けて読むと、読む際のイントネーションも含めて、確かに、耳心地よいリズムで響きます。韻文というのは、決して、音数だけで決まる、決めるものではないんですね。
このお題に結ばれた下の句、いくつかご紹介します。
捨ててよって言ったじゃない
自撮りの写真に写る二重あご
捨ててよって言ったじゃない
悪魔のささやき夜中のケーキ
捨ててよって言ったじゃない
今朝のコーヒーとウソと過去
いずれも人間らしい、人間にしか書けない詩句ですが、さらにAIには出せない回答。
捨ててよって言ったじゃない
持っててねって言ったよね?
これは師匠がこだわる「音・リズム」も整った、気持ちの良いライトハイクです。
そして。
究極の、人間が作った下の句をご紹介します。
きっと、皆さん、このライトハイクを好きになります。
捨ててよって言ったじゃない
いいの明日の図工で使うから
涙が出るくらい、素晴らしいかな人生、人間の歌です。
さて、特別回のメインはこれまでの3回ではやってこなかった新企画です。
その名も
「おくる言葉」
発案者は、林家咲太朗さん。あまりに素敵な企画なので「おくる言葉」と名前を付けてしまいました。送るでもあり、もちろん、贈るでもあります。
これまで、皆さんに考えてもらうのは下の句でしたが、上の句を自由に考えてもらうのです。
皆さんには、【9文字分の升目だけ(文字なし。空欄)× 二行】の紙をまずお渡しします。その上の列に、9文字以内で、好きな1フレーズ(上の句)をまず入れてもらうのです。
上の句創作だけで「結び」をするわけではないので、全く自由、何でも、どんなフレーズでも良いのです。ですから、簡単に出てくるかと思いきや。
意外に皆さん、考えている。
いやあ。いいですねえ。
最初に「おくる言葉」と言ったものだから、これは誰かに贈られるものだと、何となく勘づいていて、気楽に1フレーズを入れられないようです。これは皆さん、「言葉」をちゃんと丁寧に考えて、出そうとしていること。
誰かに、誰かのために、おくる言葉を考える。
ライトハイク冥利に尽きます。
皆さんに上の句をいただいた紙を集めて、シャッフルして、配り直します。
誰かの言葉が、自分に届きます。
それに応えるのです。
自分の言葉を、結ぶのです。
例えば、このような言葉がおくられた人がいました。
好きでいいよ
シンプル、6文字です。
さあ、これを受け取った人は、どう応えたか。
どう自分の言葉を結んだか。
こうでした。
好きでいいよ
考えてみるよ
たい平師匠や咲太朗さんと、これはどういうことなのか解釈をしてみたところ
「私のことを好きになってもいいよ」という問いかけに
「君を好きになろうか考えてみるよ」と答えたのでは?となりました。
詩作も自由なように、解釈も自由です。
我々の解釈は、あくまでひとつの感じ方、とらえ方です。
上の句の作者さん、下の句の作者さん、それを見た皆さん、それぞれの解釈があります。それらが色々だから、それらが違っているから、いいのです。
この短い、6文字×6文字のライトハイク。
単刀直入、心に刺さります。
一方、このような上の句をおくられた方がいました。
倍倍バババイ!
これは!?(笑)
私がこういう言葉をおくられたら、もう、お手上げです。
でも、受け取った方は、ちゃんと応えてくれました。
このように。
倍倍バババイ!
バイバババイ!
完全に意味はないです。
これは、音だけで、言葉を交わしたというすごい詩です。
詩の原点なのかもしれません。
しかも、上の句の作者が、最初のバイバイを「倍」という漢字を使ったことで
下の句7文字分でも、見事なリズムを作ることができました。
バイ、バイ、バババイ、バイ、バババイ!
いやあ、すごい。
他にはこのような、結び合わせ。
上の句と下の句の作者さんは違います。
そこに熊は出ますか
はい詐欺師もいます
今からいくね
逮捕しないで
コーヒーで火傷した
コーラで冷やそうか
やっぱりだよね
うん、彼が犯人
この「おくる言葉」がどれだけ可能性を秘めたメソッドか、皆さん、お分かりいただけましたでしょうか。
無印良品さんでの「結ぶ言葉 ライトハイク」は今回で一区切りですが、また、開催したいと思っています。もっと、もっと、「おくる言葉」やりたいです。やっていることは、平安の頃から歌い継がれてきた歌会や句会と、何ら変わりません。また、やりましょう!
ゲストのたい平師匠、「おくる言葉」を生み出した咲太朗さん、無印銀座スタッフの皆さん。
そして、当日、参加してくださった皆さん、ありがとうございました!
皆さんのおかげで、とっても、楽しかったです。
それでは。
バイ、バイ、バババイ、バイ、バババイ!


