投句された中より、きらりと光る佳句を紹介して参ります。
紫式部に似てる 小さな空
お題の上の句と並べます。
となりのご婦人
紫式部に似てる
いつもお題ゲストさんが出してくださる、上の句。
それ自体は詩でなくて構わないので、毎回、自由なフレーズを頂いています。
たい平師匠が出題した「軽く押さえてくださいね」などは、
お菓子のパッケージの裏に書かれていた、壊れやすいので軽く押さえてくださいという【注意書き】でした。正直、その言葉自体が、「え?俺、詩になっちゃうの??」って困惑するレベルです。
でも、なんでも詩になるんです。詩の対象は、花鳥風月だけではないんです。
俳句の原理主義の方には怒られるかもしれませんが、大丈夫。
俳句はもともと、俳諧。
「俳」の字がそれを証明している。
つまり、こちらの方が、逆に【原理】なんです。原点なんです。
この世の中にあるもの、なんでも、詩になるんです。
いいえ、こちらも逆。
なんでも、詩なんです。
ユニバース(宇宙)という言葉が、それを証明しています。
universe の verse は 詩句 のこと。
uni は ひとつにする ことです。
つまり、この世界は、たくさんの詩がひとつになったものなんです。
万物が、詩なんです。
そこで、今回の好楽師匠のお題。
この1フレーズは、いかにも好楽師匠(もしくは、小遊三師匠。笑)の言葉です。
「となりのご婦人」
そして、このフレーズが、お題(上の句)として出されてみて、改めてわかったことがあります。
詩を呼びやすい、言葉がある。
サッカーのキラーパスのように、シュートに導く言葉がある。
この「となりのご婦人」は、まさに、それです。
一見、詩とはほど遠いフレーズに見えますが、いやいや、詩になろうとする気持ちの強い言葉です。お題発表から、秀逸な句が続々と投句されています。
となりのご婦人という言葉が、これほどまでに詩を呼び込むなんて、実際にやってみないと気づかないものです。そういう言葉、この世界には無限にあります。
さて、今回の小さな空さんの「紫式部に似てる」
これは、本当に素晴らしいです。
確かに、今、NHKの大河ドラマで紫式部が主人公なので、この言葉が出てきたことがあるのかもしれません。でも、普通、こちらも詩で使われる言葉ではありません。
それが、となりのご婦人と結ばれることで、ポンっと心くすぐるものが誕生します。
なんでもない言葉となんでもない言葉を結ぶと、とんでもないものが生まれる。
和える歌の真骨頂です。
この似ている紫式部というのは、大河ドラマの紫式部ではなさそうです。
後世の人が想像で描いた紫式部の絵をイメージされているのでしょう。
「誰も見たことがない人に似ている」
素敵な詩です。