投句された中より、きらりと光る佳句を紹介して参ります。
今際の際に言ってやる 冬林 鮎
お題の上の句と並べます。
ここからが楽しいんだ
今際の際に言ってやる
ライトハイクは言葉で表現する詩。
絵筆でも、楽器でも、歌声でも、何なら、設計図でも、詩は表現できますが
言葉で表現する詩が、最もシンプルなものかもしれません。
使うのは「言葉」のみ。
であれば、使える言葉はたくさん持っているに越したことはありません。
ただ、絵の具をたくさん持っていたら、いい絵が描けるかといえばさにあらずですので
その言葉を、絵の具を、どう使うかによります。
今回の冬林さんの句では、その語彙力が活かされています。
「今際の際」(いまわのきわ)
普段、滅多に使う言葉ではありません。
ネットで検索したgoo辞書によると・・・
いま‐わ〔‐は〕【今▽際】
《「今は限り」の意から》もうこれ限りという時。死にぎわ。臨終。最期。
「今際」だけでも「死に際」という意味がありますから「今際の際」というのは「きわきわ」ということになります。この「きわきわ」には、不謹慎ですが<俳>があります。
そして、死の直前に「ここからが楽しいだ」というのは、負け惜しみにも聞こえるし、勝ち鬨にも聞こえるから不思議です。
ここに確かに<詩>があります。
「言ってやる」だから、実際は「言わないくせに!」と読み手も自然に心の中で返している。作品と作者と、対話できる詩は、間違いなく良い詩です。