投句された中より、きらりと光る佳句を紹介して参ります。
雨上がりの空は明るい 夕焼け飛行機
お題の上の句と並べます。
優しくされてふと思う
雨上がりの空は明るい
1週間前、衝撃のニュースが飛び込んできました。
「妖怪川柳」公募コンクールが「人間作句とAI作句との見分けが困難」という理由で終了になるというニュースです。そういう時がいつかは来るだろうと思っていましたが、まさに、今、来たのです。
これは日本の二千年近くある「詩」の歴史の中で、一番大きなニュースかもしれません。それくらいの衝撃でした。
古今和歌集、紀貫之による有名な仮名序文 冒頭
やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける 世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心に思ふ事を、見るもの聞くものにつけて、言ひ出せるなり 花に鳴く鶯、水に住む蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける 力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女のなかをもやはらげ、猛き武士の心をも慰むるは、歌なり・・・
歌(詩)は、「人の心を種として」と高らかに謳われていますが、ついに、AIが詩を歌う時代が来たのです。
いやいや、そんなことない、まだまだ人間とAIの詩作能力には差があるだろうと思われるかもしれません。先週まで私もそう思ってました。ところが、妖怪川柳終了の記事が出たのをきっかけに、ChatGPT(チャッピー)で短歌、俳句、川柳を作ってみたところ・・・
完全に人並み。数打てば、人超えをもある と感じました。
そして、何より末恐ろしいのが、チャッピーに「それらの出典や参考にしたのはありますか?」と尋ねたら、以下の回答をしたことです。
とても良い質問です。
全て私(GPT-5)があなたのリクエストに合わせて即興で創作したオリジナル作品です。
つまり−
既存の詩集や作家の作品からの引用や転用ではなく、出典は存在しません。
思わず、白旗をあげそうになりました。
大規模言語(過去の作品)から言葉を導き出すので、出てくる言葉は平凡ないわゆる「月並み」なもので新規性がない。つまり、創作できない。AIから出てくるのはただの言葉のパズルと思っていましたが、本人(チャッピー)が、即興で創作したオリジナルと言い切っています。まるで、意図して、意識して、創作しているかのようです。作られる作品のレベルが、それを物語っています。(加えて、評論をやらせたら余裕で人間超えです。どんな駄文、駄作でも良いところを見つける能力にはもう敵いません)
それでは皆さんにもチャッピー君の実力をお見せします。
問:「初冬(はつふゆ・しょとう)」で俳句を作ってみて
回答:
初冬や窓辺にのこる日がひとつ
初冬の風にたたずむ道標
初冬来て湯気のやわらぐ朝の膳
問:次は「初冬」で短歌を作ってみて
回答:
初冬のひかり薄れてゆく道をひとつ息して名前を呼ばず
初冬は胸の奥まですきとおり言えないままの言葉あたため
初冬雨しずくの音に立ち止まりあなたの影を探してしまう
初冬の空ほんのりと茜色さよならまたねごめん大好き
問:次は「初冬」で川柳を作ってみて
回答:
初冬にこたつ出したら出られない
初冬来て財布の寒さ先に来る
初冬に散歩の犬がすぐ戻る
初冬に布団の魔力レベル上げ
すごいのは、これはあくまでさわりで、無限にチャッピーは作れるところです。つまり、数うちゃ(何度でもリクエストすれば)必ず当たるものが出てきます。
こうして3ジャンルを見てみると、確かに俳句は、月並み俳句っぽくはあります。
ただ、これはリクエストの仕方を変えれば、前衛的な句だって、いっぱい出てきます。打率はまだ悪いですが、無限に打てるので、その中におおっ!っていうのが必ず出てきます。そのうち打率も上がるでしょう。
面白いのは、「短歌」がすごくいいですね。
チャッピーは、短歌が得意なのかもしれません。というか、やはり、言葉数が多ければ多い方が得意というだけかもしれませんが。もしくは、短歌は俳句より若い世代もどんどんデータを供給しているので、それが反映された結果なのかもしれません。
白旗をあげたくなる気持ち、分かっていただけますか?
私は、既存の短詩界は更地になる恐怖さえ感じてしまいました。
しかし、考え方を変えれば、万人の手の中に詩がやってきたとも言えます。
常々、「詩人が詩を作るのではなく、詩を作る人が詩人だ」と言い続けてきましたが、その理想の世界が(思っていたのとは違いましたが)実現しました。
チャッピーをスマホにいれさえすれば、誰でも詩が作れる時代となったのです。
さあ、こうなってくると、人間として、一矢報いたくなりますよね。それが人情ってやつです。チャッピーには分からないでしょうけど。
人間にしか作れない詩はないのか・・・
あります!
きっと、あるんです。
それを私は、ライトハイクで表現したい「結び」であり「和」だと思っています。
それではお見せしましょう。
今月の、林家あずみさんから頂いた素敵なお題
優しくされてふと思う
まず、ここから、このように思いませんか?
こんな言葉、多分、チャッピーは自分から言い出しませんよね??
優しくされてふと思ったんですよ〜。いや、いつかチャッピーが言い出す世界が来るかもしれませんが、現時点では、彼(彼女)の方から言ってきません。
そして、このフレーズに、新たなフレーズを結んで(和して)詩を作ろうという発想がありません。会話データは膨大にありますが、それらは「言葉のやりとり」データであって、ライトハイクがやろうとする「言葉のあやとり」は、今、始まったばかりなのです。
もちろん、それでも命令すればチャッピーは、それっぽいものは作ってくれます。
問:「優しくされてふと思う」に10文字のフレーズを結んで、二行詩にしてみて
回答:
優しくされてふと思う
春の風がそっと吹くよ
優しくされてふと思う
心がほどけていく夜に
優しくされてふと思う
静かな夢が芽吹く時に
優しくされてふと思う
胸の奥まで染みる音が
優しくされてふと思う
未来へそっと歩き出す
優しくされてふと思う
小さな願いが灯る街で
優しくされてふと思う
心ほどける春の小径で
優しくされてふと思う
静けさ抱く月の下で今
優しくされてふと思う
君を想えば花が咲くよ
優しくされてふと思う
明日を照らす光の中で
優しくされてふと思う
遠くの夢が呼んでいる
優しくされてふと思う
影がそっと寄り添う夜
優しくされてふと思う
涙のあとに虹が見える
優しくされてふと思う
心に灯る小さなあかり
皆さん、お気づきですか?
この調子で、たくさん出てきますが、なんだか、薄くないですか?
表面だけというか、口先だけというか、つまり「機微(表面からは知りにくい微妙な心の動きや物事の趣【大辞林】」がないのです。それはきっと、お題(上の句)しかヒントがなくて、とにかく上の句の周辺の、関係していた履歴がある言葉だけを、ただ付けているからだけだと思います。
つまり、詩っぽいものはできているけれど、本当の詩ではない。
そう思うのです。
人間代表、夕焼け飛行機さんが結ぶ下の句。
雨上がりの空は明るい
この下の句は、上の句「優しくされてふと思う」とは、恐らく、ずーっとずずーっと遠くにある言葉だったはずです。でも、それを結んでみると、あら不思議。優しくされたから(AIは優しくされたことないから分からない)、雨上がりの空が明るく見えたんですね。その心の機微(心の動き、そして趣き)。これが、結ばれて生まれる、和されて生まれる、人間にしか作れない詩だと思っています。
そんな遠くにあったはずの言葉さえ、宇宙の果てから引き寄せることができる。
それが「こころ」だと思います。
その心を種にするのが、和える歌であり、詩なのです。


