投句された中より、きらりと光る佳句を紹介して参ります。
まぁだだよと膝の上猫 桜 花音
お題の上の句と並べます。
もういいんじゃないの
まぁだだよと膝の上猫
まず、喬太郎師匠のお題が秀逸です。
この言葉を糸口にして、どのように言葉を結べば詩が誕生するか。
心をくすぐることができるか、考えます。
同じ意味の言葉として「そのくらいにしておいたら?」があります。
ここで考えると面白いのは「もういいんじゃないの」と「それくらいにしておいたら?」の違い。
後者の「それくらいにしておいたら?」は、見ているだけ(傍観者)の感じがしますが、お題である「もういいんじゃないの」は当事者のニュアンスも加わります。
表現の仕方で、受け取る感じも変わります。
この頃よく、「言い方〜」という会話を聞きます。
言い方で、全然、変わる。
それが言葉の怖いところでもあり、このような言葉のあやとりなどでは、面白いところです。
さて、今回の佳句はまさに当事者としての返答。
「まぁだだよと膝の上猫」
言葉を結んだのは、(詩の世界の中では)上の句と同一人物になります。
そこに新たな登場動物も出てきて、世界に色が加わります。
1フレーズに1フレーズを結ぶライトハイクは、誰かと誰か、二人で結ぶ形が原型です。公募サイト「結ぶ言葉 ライトハイク」ではそれを分かりやすくするために、お題として「上の句」を出して、下の句を皆さんに結んでもらっています。
ただ、詩形としては、一人でも結べる詩でもあります。
それは、まさに、たい平師匠が表現された「二行の俳句」
これが、いわゆる普通の「俳句」と異なるのは、モノローグではなく、ダイアローグ(会話)になっていることです。自分の中の誰か、太古の昔は人と神の会話とも呼ばれていましたが、それは私が考えるに、自分の中の詩人との会話だと思います。
会話には、おのずと明るさが生まれます。それが「俳」(明るい詩)だと思っています。
単純ですが、二行という形式には実は大きな意味(作用)があると感じています。
さて、今回の佳句。
上の句「(少し呆れて)」
下の句 「(少し嬉しい)」
猫に代弁させて、この微妙な自分自身の心の綾を表現しているところが、いい詩だなあって思います。
ライトハイクについて、いろいろ考えるところを述べていますが、詠み手(作り手)にとって、これらはどうでもよく、深く考えずに「二行の俳句」を楽しんでいただければと思います。
「取り合わせ(和)」「切れ」「俳」・・・俳句(詩)にとって大事なことを、意識することなくできてしまうのが「二行の俳句」という仕掛けです。
シンプルで本物である(simple & genuine)が、ライトハイクの誇りです。