掬う湯の花君と 杏里
投句された中より、きらりと光る佳句を紹介して参ります。
お題の上の句と並べます。
熱さのなかにも
掬う湯の花君と
今回、ふなっしーさんからいただいた上の句「熱さのなかにも」
この短いフレーズの中にも重要な鍵が含まれています。
それは「暑さ」ではなく「熱さ」であること。
ライトハイクは自由詩ですから「あつさのなかにも」と全て平仮名にすることも可能でした。そうすると「暑さ」「熱さ」に加え「厚さ」も出てきます。
今回、ふなっしーさんが選んだ言葉は「熱さ」
ですので、ここに結ぶ言葉を探すことから始まります。
これまでのたくさんの投句を拝見していると「熱意」の熱さを取られている方が多いです。もちろん、それも正しい熱さなのですが、この句はお湯、それも温泉の熱さを選びました。
その言葉に何を合わせるか。それを俳句では「取り合わせ」と言いますが、短詩の魅力は、その取り合わせの妙にあります。
ダジャレって、詩をやる人にとっては、あまり肯定的に取られません。親父ギャグなんて、もってのほか。でも、私は大好きです。同音異義語って、簡単に取り合わせの妙を見せてくれるから。予期せぬ言葉の出会いを作ってくれる。
布団が吹っ飛んだ
なんて、最高ですね。布団が「吹っ飛ぶ」ことは、まず、ないんです。でも、このダジャレのおかげで、その状況が生まれる。見える。これは立派な詩だと思います。
さて、「掬(すく)う湯の花君と」ですが、みなさん、どんな情景が見えましたか。私は子どもと温泉に入っていて、「ほら見て〜」と子どもが見せてくる情景が見えました。
熱さの中に温もりがある。
素敵なライトハイクだと思います。